2004年2月刊『万華鏡をのぞいたら』黒川博信

「四国新聞」2004年4月17日

少年の好奇心育てたい
 バックパッカー一つでインドに向かったのは、日本がバブルの絶頂にあった時だ。好況の夢に浸る大都会の大手商社を辞め、放浪の旅へ。物質文明の対極にある国で見た「幸せ」は、ノート七冊分の日記として残った。「この経験を子供に残そう」と書き直した日々の記録は、二冊の本になって全国で二万部売れた。
 「まさか本を出すなんてね。人生って、どう転がるやら」。帰国後に古里の旧大内町で学習塾を開いて14年になる。会社員、放浪、塾講師。曲がりくねった歩みの中で得た多層フィルターを通し、感じた思いを本紙文化面の「万華鏡をのぞいたら」に連載。うち八十八編を収録した本著が三冊目の出版になった。
 三冊はいずれも大手出版からの全国販売。だが自分を「文筆家」とは思わない。「せっかくの足を踏み外した人生。こういう変わりモンのオジサンの気持ちを伝えられたら」。2001年の春からこの4月まで、150回の長期シリーズを支えたのは、老若男女、日に日に寄せられる読者からの反響だったという。
 共働きのサラリーマン家庭で生まれた。家は三本松港の目の前。家に帰ればいつも港で海を眺めた。「水平線の向こうに何があるんやろ」。そんな少年の夢をくすぐったのが、中学生の時に買ってもらった短波ラジオ。微弱な電波に誘われるように外国語大学に進んで商社に就職。五年後に世界一周の一人旅に出る。
 旅やサラリーマン時代の思い出、家庭教育の在り方、古里への憧憬…。時に社会の暗部をえぐる峻厳さも塗り込め、バラエティーあふれるエッセー集に仕上がった。笑いと涙の言葉の宝石箱。心和ませる優しさと淡いペーソスを漂わせた筆さばきは、心乾いた現代人に本当の幸せの意味を教えてくれるようでもある。
 謙虚。ほんのりとした温かさが、子供たちに慕われる何よりの理由だろう。塾のモットーは「好奇心を育てる」。「テストで何点とか何番とか、そういう『数字』ではなくて、一人ひとりの心の世界を広げてあげたいと…」。物質文明を象徴する数の概念。その対極の豊かさを胸に、多感な十代と日々、接している。

 

「四国新聞」2004年

放浪体験、家族、教育…「大切なこと」つづる
 東かがわ市の学習塾講師、黒川博信さん(43)が本紙木曜日付文化面に執筆中の連載企画「万華鏡をのぞいたら」が、1冊の単行本にまとまった。インドを目指した放浪の旅の体験談をはじめ、家族や教育、時事問題など多彩なテーマをつづった笑いと涙のエッセー集。人生って何だろう、本当の豊かさって何だろう…。現代人が忘れがちな「大切なこと」をそっと思い出させてくれる、小さな幸せの物語に仕上がった。
 黒川さんは、旧大内町生まれ。大阪外国語大を出て東京の大手商社で五年間勤めた後、三年計画で世界一周の一人旅に。インドや東南アジア諸国を巡り、帰国後は大好きな古里、三本松で学習塾を始めた。
 連載は2001年の4月に「万華鏡をのぞいたら クロ先生の三本松日記」としてスタート。すでに140回を超え、「心が洗われました」「泣きました」などたくさんの反響が寄せられている。
 単行本には昨年末までに掲載した中から選んだ88編を収録。「インド放浪の旅のあと」をサブタイトルに「僕は旅に出る」「子どもの目線」「モラルのゆくえ」「地球人」「星空を見上げたら」など8章に分けて再構成した。くすっと笑わせたり、ほろりと涙を誘ったり。時に現代社会を鋭くえぐる犀利さも漂わせ、まさに「クロ先生のすべて」が詰まった一冊になった。
 「バブルの絶頂にあった日本で、しかも大都会でサラリーマンとして過ごした後、その対極にある国々を回った。そんな経験かを通して感じた幸せや豊かさについて書いてみました」と言う黒川さん。しんみり心に染み入る素朴な言葉の「宝箱」は、ストレスに傷つき、心乾いた読者にささやかな安らぎを与えてくれるようである。
 出版を前に取次会社などから注文が殺到、異例ともいえる発売前の増刷を行った。「万華鏡をのぞいたら インド放浪の旅のあと」は、県内をはじめ全国の書店で取り扱っている。

 

「産経新聞」2004年4月29日

現代社会の問題つづる
 リュックサックを背負い、一人で外国を旅する「バックパッカー」だった学習塾経営、黒川博信さん(43)=東かがわ市三本松=が、旅の経験や、現代社会の問題などを述べたエッセー集「万華鏡をのぞいたら-インド放浪の旅のあと」(花伝社)を出版した。
 黒川さんは27歳の時、東京でのサラリーマン生活をやめて、約2年間、大きなリュックサックを担いでインドや東南アジアの国々を一人で旅して、帰国後に学習塾を開業した。バックパッカーの経験をつづった本は今回で三冊目。
 「万華鏡-」では、一人旅でさまざまな人と出会ったときの衝撃的な経験をベースに、旅のできごとや日本の教育問題、イラク戦争などにも触れ、淡々と率直な意見を述べている。黒川さんは、「忙しい人に、特に読んでほしい。そして何かを感じてくれたら」と話している。