2005年3月刊『武富士対言論』北健一

「赤旗」2005年4月17日  評者 松田繁郎

カネで人の心が買えるのか
 あるフリーライターが週刊誌に発表した記事「武富士残酷物語」。世界有数の大富豪、サラ金の武富士で、ノルマ未達成の従業員に延々と罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせる労働者いじめがおこなわれている実態が詳しく描かれていました。
 武富士が、この記事を書いたフリーライターを名誉毀損(きそん)で訴えました。
 記事の原稿料は6万円。武富士が訴状に張った印紙代だけで23万7600円ありました。原告・武富士側の賠償請求額は5500万円。後で請求額は1億1000万円に増額されました。
「絶対、記録しなければ」と、裁判を2年にわたって追いかけ、書き下ろしました。
「大企業の悪事は、外からの取材では、なかなかわかりませんが、武富士の中堅幹部クラスの人が取材に協力してくれたので助かりました」
 名誉毀損訴訟を使った言論弾圧の実態と賠償額高額化がどのように仕掛けられたかを検証し、武富士によるマスコミ接待も批判しています。
 「取材して驚いたのは、訴えられることを想定しないで書くライターが非常に多いことです。『敗訴してもしょうがない』という人もいました。カネのために法廷でウソをついたり、人を脅す悪い弁護士が多いのも意外でした」
 2003年、ルポ「海の学校『えひめ丸』指導教員たちの軌跡」で『週刊金曜日』ルポルタージュ賞を受賞。気鋭のジャーナリストです。
 「武富士は、カネで人の心が買えるとほんとうに思っていたようです。まともな報道をとりもどさなければいけません」

 

「エコノミスト」2005年4月12日

 強引な取り立てを摘発するルポに、名誉毀損訴訟の乱発で応じた武富士。本書は標的にされたフリージャーナリストたちの、闘いの記録である。盗聴事件、弁護士の暗躍、記者会見への潜入など武富士暴走の現実が明らかに。