2010年10月刊『品川の学校で何が起こっているのか』佐貫 浩 著 
2010年8月刊 『小中一貫教育を検証する』山本由美 著

 

「生活教育」2011年4月号 五十嵐俊二(京都・京都市立栗陵中学校)

「子どもと学校を守れ」の緊急レポート
 品川をはじめとする各地の教育改革は、市場主義的競争原理による工場の生産ラインと同じ手法で学校をつくり変えようとしているように見える。この印象が的を得ているのであれば、そんな方法が子どもの教育にそぐわないことは明らかである。人間を適合品と不良品に選別することは許されないのだ。しかし、そういう事態が進行していると警告しているのが、今回紹介する二書である。
 昨年末に相次いで刊行されたブックレットであるが、この緊急レポートを契機に、わたしたちは本来の学校を取り戻す手掛かりを見つけなければならないという思いを強くするに違いない。学校が危ないと、現場の実態に警鐘を鳴らすことは長く言われ続けてきたが、いま「学校」そのものの存在が意図的に切り取られるような事態が全国的に進行していることを、わたしたちは目の当たりにすることになる。
 『小中一貫教育を検証する』では、全国に拡がっている実態と、そこに至る経緯が、歴史的背景と各地の事情を踏まえて明らかにされている。前半は「何のための小中一貫教育か」との問いを立てて実状に迫っているが、当局はまともに答えることもできずに、初めにがくちゅうにぬき小中一貫教育ありきで進められていることがわかる。
 各地のいずれのケースにおいても、おそらく新自由主義的改革の勢いのままに、本書が「中高一貫校の見直しの方途として」と述べているような、便宜のための小中一貫教育であり、コスト削減、財政効率性のために小中一貫校への統廃合が画策されたとしか思えない裏事情を見て取れるのだ。
 九八年時点の民主党は「すべての児童に中高一貫教育を提供する」という中等教育の重要性に言及していたにもかかわらず、〇六年の教育基本法改正から、義務教育年限の規制緩和や複線型高校制度への現実路線に切り替わるに至るくだりは、腰砕けがした感がして大変残念な局面であった。財界の要請の下になされたというのも頷けるが、「国家百年の計」どころか、何たる打算であったことだろう。
 『品川の学校で何が起こっているのか』では、実に多面的な角度から精査され、統計上の数値の変化も取り上げながら、リアルな状況が報告されている。客観的に教育問題をとらえる筆者の見識の高さが考察の裏付けになっているとも言えるだろう。広く教育にかかわる人たちへの貴重な警鐘であり、教育そのものとどのように向き合うべきかについての自らへの検証にもなり得る重層的な内容が盛り込まれている。ブックレットに収めるには惜しいほど濃密であるが、誰もが手に.取ってほしい体裁になっているということだろう。
 まず、千人が生活するという施設一体型の小中一貫校の高層校舎の写真を見れば、多くの人がおぞましささえ覚えるではないだろうか。およそ子どもが育つ教育環境とは程遠い、単なる入れ物のように見えてしまう。低学年の子どもたちが校庭を公園のようにして遊ぶような風景は残っているのだろうか。問題は、子どもの発達段階を無視しているところにあると本書は指摘する。
 また、品川の学校選択制度が取り返しのつかない地域破壊になっていることもつぶさに検証されている。学校教育は地域とともに子どもを育てる場であるという常識からもかけ離れた暴挙であり愚行と言わざるを得ない。子ども同士のつながりや地域とのつながりを断つことは、たとえ何らかの効果があったとしても決して手をつけてはいけないことではないだろうか。
 多くの学校が統合により地域から消えてしまった。もうゆみもらい引き返すことが容易ならざるところまできてしまったが、子どもたちをこのまま実験台にしておくわけにはいかない。当局は、自画自賛しているようだが。
 わたしたちは、子どもの発達段階に即した小中連携教育を模索しなければならない。多くの人に両書を手に取っていただいて、こうした改革まがいの波に一日も早くストップをかけたいものである。