2015年7月刊『日本の中国侵略の現場を歩く』青木 茂 著

『日中友好新聞』2015年10月5日  評者 室田元美

 日本が中国を侵略したあの戦争のなかで、いったいどんなことが行われていたのだろうか。加害を語る兵士はとても少なく、多くの真実は明るみに出ないまま眠っているのではないかと思う。
 東アジアのこれからの平和を考えるうえで私たちが避けて通ることのできない加害の問題を本書では「撫順」「南京」「ソ満国境」の3つの「現場」に着目し日中の和解と友好のために何をすべきかを読者に問いかけている。
 日本軍が約3000人の村人を虐殺した平頂山と、戦後、戦犯として送り込まれた日本兵らが寛大な待遇を受け、鬼から人と生まれ変わった撫順戦犯管理書。海外のジャーナリストや駐在員なども大虐殺を目撃した南京。そして日本ではほとんど知られていないが、ソ連軍に備えるハイラルの要塞工事で亡くなったおびただしい数の中国人労工たちを捨てた穴=万人抗が残されているソ満国境……。
 著者は、戦後70年をまえにこれらの地を訪れ、中国がどのように抗日戦争勝利70年を迎えようとしているかを知りたいと思ったと書いている。そして、これらの地に、侵略で受けた悲劇を「忘れまい」とする巨大な記念館が建てられていることにまず、ふれている。
 しかし、それだけではない。ハイラルには近年、「満州」に取り残された日本人母子の像が設置されたという。撫順戦犯管理所での赦(ゆる)しもしかり。このような中国の温かい心を日本人にぜひ知ってもらいたい。
 日本から加害者意識をもって現地を訪れ、史実や現地の人びととのふれあいを日本に持ち帰って伝えようとする著者のような人たちに対しても、寛容な気持で迎えてくれる。それに甘んじるだけでなく、戦後70年を迎えたいま、何をすべきかを一人ひとりが問われているのだと思う。定価1700円(税別)

『さようなら!福沢諭吉』創刊準備3号(2015年10月10日)

今年は「戦後70年を迎える節目の年」と言われる。この「戦後70年」が持つ意味はいろいろあるが、日本にとっては、日本が起こした侵略戦争の敗戦から70年ということであり、日本の侵略で最も甚大な被害を受けた中国にとっては抗日戦争勝利から70年ということだ。そして、戦後70年を前に私が知りたいと思ったことは、日本の侵略で筆舌に尽くしがたい惨禍をを受けた中国が抗日戦争勝利70年をどのように迎えようとしているのかということだ。
それを知るため、日本の侵略で被害を受けた中国のたくさんの町や村を訪ね、惨劇の現場を確認し、被害者や遺族や研究者らから話を聞いた。こうして私が訪ね歩いた現場のうち、撫順と南京とソ満国境(ソ連と「満州国」の国境)の三箇所を取り上げ、「戦後70年」を迎えるそれぞれの情況を本書で紹介している。その三箇所の特徴を以下に記しておこう。
一 撫順「満州」(中国東北部)前面侵略の初期に中国人住民3000人を日本軍が集団虐殺した平頂山事件の現場である。一方、抗日戦争勝利後に開設された撫順戦犯管理所では、天皇制軍国主義思想を信じて疑うことを知らない約1000人の日本人戦犯を人道的に指導し、日中友好と反戦平和の活動を生涯にわたり実践する「真人間」に生まれ変わらせた。
二 南京 日本の歴史改竄主義者が消し去りたくてしかたがない加害事実の一つである南京大虐殺の現場である。あまりにも有名な事件なので説明は省略するが、中国では、南京大虐殺で30万人が殺害されたとされている。
三 ソ満国境「満州国」防衛と対ソ連戦争を想定し、日本軍(関東軍)は十数カ所の巨大要塞群と道路や鉄道など関連施設の土木建設工事を遂行するため320万余の中国人を徴用(強制連行)し、劣悪な環境の下で100万人余を死亡させた。
以上の三箇所に書店をあて本書で示した事実を基に、「戦後70年」を迎えようとしている中国の現状を一言でまとめると、日本の侵略で受けた惨禍に対する被害者の心の傷は癒えておらず、侵略・加害の事実を認めることすら拒み続ける日本に強烈な怒りと不信感を持っていると言うことができるだろう。
このように、日本に対する中国の情況は大変に厳しく、日本を再び侵略する国に変えようとする歴史改竄主義者の安倍晋三が首相として「君臨」する日本に対する中国の警戒心は半端なものではない、
しかし、私たちにとって重要なことは、中国が非難しているのは安倍首相をはじめとする極右・靖国派の「指導者」であり、日本全体を批判しているのではないということだ。日本が起こした侵略戦争の責任は日本軍国主義の「指導者」にあり日本の一般民衆は中国人民と同じように被害者であるという中国指導者の考えは、中国の一般の人びとに広く浸透し徹底している。
このような情況を理解すれば、今、最悪の状態にある日中関係を改善することは可能だという希望と期待を私たちは持つことができる。こんなことを紹介する本書をぜひ手に取ってご覧下さい。
(著者青木茂筆の本の紹介)