2015年7月刊『里山の「人の気配」を追って』富田啓介 著

『東京新聞 』「この人」2015年9月17日付

『里山の「人の気配」を追って』  富田啓介さん

 人の生活圏にあり、多様な動植物が息づく里山が荒れている。薪の採集などで人が暮らしに利用することが減ったり、都市化が進んだりしたためだが、そんな現状を学術的な背景を含めて気軽に読める本「里山の『人の気配』を追って」を出版した。
 「里山は手付かずの自然ではない。人の手が入るからこそ、生物多様性が保たれることを知ってほしい」
 ごんぎつねの里として知られる愛知県半田市で生まれ育った。動植物が豊かな地元の自然に目を向けたのは、中学2年生の時。図書館で偶然、手にした写真集に掲載された絶滅危惧種、シラタマホシクサに目がくぎ付けになった。
 「コンペイトーのような小さな花がとてもかれん。絶滅の可能性があるのに、身近なところにあるなんて信じられなかった」。学校が休みの日には、里山に自転車を飛ばした。好きが高じて、大学と大学院で自然地理学を専攻。昨春から法政大で教壇に立つ。
 主要な研究地域は東海地方の里山。都市の近郊では今も宅地などの開発が進み、里山は減っている。「失われるものがあることを知った上で、開発というものを考えていくべきだ」
(諏訪慧)

 

『中日新聞・東京新聞 』2015年8月16日付

 里山というと、自然の豊かな景観や地産地消の文化が話題となっているが、著者は「里山には『人の気配』が溢(あふ)れていて、自然に対して働きかけをしていた」と言う。本書は名古屋市近郊や知多半島の丘陵に点在する里山を舞台に、その素顔に迫る環境論。ため池や湧水湿地(ゆうすいしっち)を持つ里山の四季、植生、生き物をはじめ、人々との深い関わりを探る。(花伝社発行、共栄書房発売・1836円)