花伝社設立のことば

 同時代にあって同時代を洞察することはむずかしい。かつてないすさまじい変化の波が加速度的に技術、経済、社会、文化、生活のあらゆる分野におしよせ、予想もできなかった新しい現象が大量に生じている今日、状況をみきわめ未来をみとおすことはなおさら容易ではない。
 このような時代にあって、これまでの人間の歩みと文化・知的活動の成果をふまえつつ、自由な発想、自由な方法、自由な想像力をもって、同時代をとらえてみたい、とりわけ新しい時代と価値観のなかで育った戦後世代の新しい感性で生活と文化をとらえ未来を考察してみたいと考え、ここに花伝社を設立する。
 人類は、まもなく新しい世紀をむかえる。どのような時代の扉がひらかれようとしているのであろうか。21世紀にむけて、いま何が準備されなければならないのであろうか。
 安易な楽観や公式主義に安住することなく、また絶望の饒舌に浸ることなく、否定しようもない現実を現実として把握する勇気をもって過去と現在をみつめ、人々の歩みのなかで読者と共に人間を考え21世紀を考察してみたい。


1985年10月5日
花伝社代表 平田 勝

澤井洋紀画 「ベンタイン市場の朝」(ベトナム)


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